くじば そしてツバメたち 3


車輪 整備
 冬の陽射し暖かな午後は、プラットホームや車庫の片隅で日向ぼっこをしながら近所の子供たちと遊んだものだし、あいにくの雨の日などは、側線に留置されている客車のなかで、マンガ雑誌をながめたり昼寝をしたり。
 庫や駅に勤める人たちも親切で、そんなマイペースの高校生の好きにさせてくれた。 とくによくしてくれたのが、高橋三郎車輛課長である。氏は明治42年11月20日生まれというから、当時61歳といったところか。昭和2年8月25日の入社以来、廃止の日までの四十三年半を井笠鉄道ですごした人だ。毎回、「また来たのか」と、くしゃくしゃの笑顔で迎えてくれた高橋氏には、車輛の竣工図の青焼ばかりか、「他の人にはナイショだよ」と、新聞紙にくるんだ行先表示板までもらってしまった。よく利用した笠岡ユースホステルの経営者の父君が偶然にも車庫に勤務されており、高橋氏が「片岡あッ」と独特のイントネーションで呼びかけていたのも、昨日のことのように覚えている。
全景

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