米内沢の先、県道が線路をオーバークロスするあたりから、蛇行する大阿仁川が線路に近づいてくる。桂瀬の手前の大蛇鼻で川は大きく半円を描いてカーブし、線路が右に緩やかに曲がると桂瀬である。桂瀬を過ぎると川沿いを走り、やがて阿仁前田。ここはかつて林用軌道が大阿仁川の支流・小又川沿いに山奥へ延びていたことで知られる。このあたりは、江戸時代には御留山も多かったようだ。私も、倉庫に転用された人員輸送車やレールなどを積雪のなかで発見することができたのは、収穫だった。
また、このあたりにも中世の館跡があり、その周辺の平坦面からは縄文式土器の破片も発掘されているという。古代から山の獲物を求めてこんな奥地にまで踏み込んでいた人類の凄さには、なんとも粛然とせざるをえないものがある。
阿仁前田を出ると、線路はこの線としては長い右カーブの鉄橋で小又川を渡る。前田の集落の裏山に上ると、その光景を俯瞰することができる。また、上流側でカメラを構えていると、いい近道とばかり、地元の小母さんがけっこう長いこの橋をすたすたと渡っていくのを見かけた。鉄橋を渡るのがちょっと苦手な私は、道路の橋も近くに架かっているというのに、なんと大胆な、と、ちょっと呆れてしまったことを覚えている。