富士を愛でる 1


 富士山をめぐっては、古来、多くの和歌や小説、エッセイなどの文学作品でその美しさが表現されている。あまりに有名なものが多いから、ここでそのいちいちに触れることはしない。

 鉄道と富士、ということでも、あらゆる場所で写真が撮られてきた。古くは高松吉太郎氏や細江正章氏が全盛期のC53を東海道本線で撮影した名作が有名だ。その他、およそ富士が見えるありとあらゆる場所でその美しい山容を写しこんだ鉄道写真が撮られてきた。わたし自身、冬の甲斐大泉でC56を待つあいだ、遠くに屹立する富士の美しさにしばし見とれた記憶がある。

 しかし、ここでいまさら紹介するのも気恥ずかしい、あまりにも有名な古歌に、

田子の浦ゆ うち出て見れば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける (山部宿禰赤人、「萬葉集 巻第三」)

と詠われたからでもないが、田子の浦あたりから見る富士山と裾野の姿かたちが、わたしにはいちばんしっくりくる。もちろん、雪を冠した姿がいい。

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