イラストの小部屋  資料編  銅版画時代2

 馬車鉄道ならぬ、ロバ車鉄道である。図は前頁の作例と同じ"TRANSPORTASION"に掲載されていたもので、「ほんとにこんなのあったのか?」と思い検索してみると、実際にあったのである。ロサンジェルスの近くのオンタリオから郊外の丘の上まで、1887年に Ontario & San Antonio Heights RailRoad という会社が始めた鉄道で、坂道を引っ張り上げるのにはロバを使い、下りは後ろの貨車にロバを載せて戻ってくるというものであった。
 1912年にパシフィックエレクトリックに買収されるまでロバで動かしていたらしく、写真もあり、それを元に復元した車両が街中に展示されているという。たしかに、このイラストの通りに一輪の cage car を牽引していたようだ。なんでロバの乗っている車が二輪ではなく一輪なのか、どうしてロバを歩かせないのか等々、謎がいろいろあるのだが、とにかく実在してちゃんと営業していたのは間違いない。約10マイルで1200フィート登っていたというので、平均勾配はおよそ26‰という計算になり、平坦部もあったと考えられるので、このイラストの勾配もまったくのデタラメではないかもしれない。
 この絵が正確だとすると、客の乗っている車両はブレーキシューがついているので、先頭の運転手?がハンドブレーキを操作していたのかもしれないが、問題はcage car の方である。一輪の後ろに妙な格好のシューが見えている。これで安定を保ちかつ暴走を防いでいたと思われるが、ロバが牽く上りでは摩擦が邪魔になり、下りではおそろしく発熱し騒音が出たに違いない。こんな仕掛けをつくってまで、わざわざ一輪にする理由が分からない。しかも、坂を下りきって街中に戻ったら、ロバを再びおろして先頭につけないと平坦部の動力が無いではないか。
 もしかして絶妙のブレーキ操作によって、坂を下りた後は惰性で終点まで走るようにしていたとか? そうすると、途中で邪魔が入り停まったら、ロバをおろさないと進めないってこと? 想像するだけで、いろいろ笑える鉄道である。

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