イラストの小部屋  資料編  銅版画時代3

同じ本からもう一枚。なんと2階建ての蒸気動車である。これは実在していかどうか確認できていない。ただ、前ページのロバと同じ人が描いている(左下に署名が入っている)ということからすると、まったく想像の産物というわけではなく、何か実物を参考にした絵なのではないかという気がする。
 逆に、怪しい点をあげると、下回りが固定の4輪になっているらしいところ。
 蒸気動車は steam rail car または steam railmotor という。いろいろ検索には引っかかるが、いまのところ2階建てのものは見つかっていない。何かご存じの方がおられたら、ご教示ください。

 デッキの2階へ上がる階段の弧を描いたデザインも興味深い。こういう螺旋階段のようなタイプは、20世紀初めの欧州の2階建て市電などに実際存在しているので、この車両が仮に作者の想像によるものだとしても、パーツは実物をもとにしているのではないか。2階部分を取り除けば、わりとよくある蒸気動車のデザインに近い。蒸気動車と2階建て市電の合体したキメラみたいなものかも。
 あるいは、動力車と客車が区別されている連接タイプの蒸気動車もあるので、それをモデルにして前後をくっつけて描いてしまったという可能性もありそうだ。
 全体に、庶民の乗り物というより、紳士淑女向け専用車という印象がある。客室の窓のデザインがそうだし、だいいち2階へ上がるのが螺旋階段というのは、なんとなくゴージャス感がありませんか?

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