明治の残照 5

変電所内

重たい列車が去ると、あたりの空気を支配していた緊張感が失せて、風景と対話する時間になる。
 煉瓦の質感。窓の外の光まぶしい眺めと、暗い壁面の対比。国道18号を行く自動車のエンジン音と、建物を包む静寂。 道路側の入り口脇に生えている木は、現役時代にも植わっていたのか。

 そもそも、この建物にはどんな機械が置かれていたのだろう。丸山変電所の方は二棟あり、「機械室」と「蓄電池室」だったという。 矢ヶ崎のこの建物は丸山の「機械室」と同じデザインだが、こちらはなぜ一棟だけなのか。 建設当初は隣に「蓄電池室」もあったと思われる古い写真が存在するようだが、だとしたら「蓄電池室」はなぜ早くに撤去されてしまったのか。 アプト式の廃止よりずっと前に、蓄電池は使用されなくなっていたのか。あるいは白い建物(信号所)が造られたときに機能の一部が移されたのだろうか。

窓 木 外壁

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