明治の残照 3


西側壁面 国道側
木 内部
線路側

煉瓦の建物の周囲は、東側が旧信号所、北側の国道までは小さい倉庫のある草地で、駅よりの西側には国鉄の官舎か何かが建っていた。生い茂った草を掻き分けて近づくと、国道側の入り口は鉄条網がはられ「立ち入り禁止」と掲示があるものの、線路側からは簡単に入ることができる。内部は何も残っていなかったが、ガラスが窓枠ごと撤去されているためか隣の信号所に比べて荒れ果てた感じはない。
 どっしりと落ち着いた印象があり、妻上部の模様とその下に開いている10個の孔の配置や、上部が緩いアーチになっている縦長の窓、外壁が屋根に続く部分で細かい段差が外側に向かってついているところなど、「ああ良いデザインだな」と思う部分がいろいろあった。

 この頃、まだ煉瓦積みの機関庫や倉庫などが、ところどころに残っていた。ただ、使用中の機関庫などは近くに寄って造りをじっくり見る機会がなかったので、私の場合、大きな古い煉瓦積みの建物をきちんと観察したのは、この変電所跡しかない。最初に訪れた時点では廃止から10年もたっていなかったはずなのだが、築60年近い長い歴史がしみこんでいるかのようなヒンヤリとした暗がりの中にたたずんでいると、時を超えてこの建物をつくった人々のセンスが少しだけわかるような気がした。

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