線路のある風景 5

萌え立つ緑

この深い谷間の
緑に覆われた線路で

さっきから俺の前を歩く
先行者が居る

ときおり地図だか
手帳だかを出してみたり

立ち止まって対岸の様子を眺めたり


おい そこの蜜蜂
ちょっと行って見てこい

あいつはな
どうせ ここいらへんの
木に目をつけている
山師のはしくれに違いない

それなら
もうすぐ吊り橋を渡って
向かいの林に姿を消すだろうが
そうでないとすると
ちょいとやっかいだ

今日のこの辺りに溢れる光は
俺が独り占めするって
決めてるんだからな


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