線路のある風景 2

去ってゆく人


この土地の人以外誰も知らない 一日二往復の列車しかない小さな鉄道の
雪に埋もれた短いホームに その人は静かに降り立った。

誰にも挨拶もせず 誰から声をかけられることもなく。

この広い ただ一軒の家すら見えない雪原の どこに彼の行く先があるのだろう。
わずかな荷物を背負って 家に向かうのか。 そこでは誰かが待っているのか。

語られぬ物語が 雪原を渡る風のなかに舞っている。

次へ