馬よ お前の目には何が映っているのか ぬかるんだ道の足跡と轍。お前がこの街で働き始めたときから変わらない日々のことか それとも、この泥濘の後にやってくる 乾いた春の記憶だろうか 老いた人よ あなたの目には何が見えているのか もう誰も通わない工場の 寒々とした未来のことか それとも、疲れた優しい馬の背で 変わりなく揺れる鞍を見つめているだけなのか
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