朝陽は東の稜線の下にあり 薄明の空は濃い紫を流したよう。 夜明け前の冷気が雪原にたちのぼる蒸気を霧に変える。 半時も経てば雲は薔薇色に染まり 空も地上もとどまることなく色を変えていくだろう。 人の行きかう気配や一日の始まる物音とともに 鉄道の動き出す息遣いがあらゆる経路を伝わり始めるだろう。 すべてが動き出す前の静寂。 あらゆるものが彩りを持ち始める以前の 墨絵のような世界。 私だけが見つめているなかで ゆっくりと流れていく時間。
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