children in the sunlight 12

レール上を走る

君は覚えているかい

自分の足で確かめた
細いレールの感触
狭い線路の間隔を


   あの夏の終わり
   谷間の小さな停車場で
   過ごしたひとときを

10代最後の2年間、鉄道に関してやっていることといえば、もっぱら羅須の活動で、写真は木曽森林鉄道だけを撮っていた。働く人の姿はいろいろ写したが、撮影に入っていた奥の方で子どもがいるのは田島と滝越、それも学童列車「やまばと」号の発着時だけしかチャンスはない。観光客が「みやま」に乗っている夏の時期には、こういうシーンがときおり出現することもあるが。

線路をまたぐ

木曽で覚えたのは、被写体の人物に接近して撮ることだった。それまでは、子どもや老人を撮るにしても、相手がカメラを意識していない距離で、横や後ろから狙うことが多かった。サブロクの専用線などは、国鉄よりかなり自由がきくとはいえ、作業の邪魔になったり危険を冒して迷惑をかけてはいけないと思い、こちらからにじりよって撮るのは遠慮していたのである。
 ところが、木曽森のような環境では、誰もが入れる場所からだとおもしろいものは何も撮れない。最初から、迷惑をかけるのを覚悟で仕事場に入り込んで撮らせてもらわないと、どうにもならないのだ。
 何度か通って、顔見知りの人が増えると、向こうも警戒しないし、こちらも大胆に行動できるようになる。カメラアイが、望遠から広角になる。相手が、カメラが向けられていることを知っていても、それが表情や動作に出ない瞬間を狙うようになる。梅村さんや杉さんのような写真は、どこかに行ってたまたまシャッターを押したからといって、そうそう撮れるものではない。ああいう画を、どうやったら撮れるようになるのか、この時期になってようやく感覚的に分かるようになったのだと思う。

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