機関庫の裏手から本線と別れる引込み線には
一日に二往復だけ汽車が走る
午後の列車は予定より何分も早く
もうカーブを曲がってやってきた
まったく、ここではダイヤなんて
まるで当てにならないのだ
去っていく姿を見ていると、背後で叫び声がした
線路際の土手を駆け上がった子が、
追いかける皆を振り向きもせず、必死で線路を走ってくる
まだ残る雪の上に、そっとシンダが降る中を
たくさんの声が駆け抜けていく
そうだ! 行け! どこまでも列車の後を追って
次の春には、この線路を汽車が走ることはないのだから
10日ほどして再訪すると、もう鹿ノ谷のあたりでは雪も消えかけていた。
シャッターを切ったときには気づいていなかったのだが、上の写真の右隅を見ると、列車が通過する前に線路際の土手にあがった子どもたちが、走り出すタイミングを待っている。
専用線の終端近くで積車を牽き出すところを撮ろうと考えていたのに、目的地へ行きつく前に列車が来てしまったので、走行写真としては失敗しているのだが、失敗したからこそ、この瞬間に出会えたのだった。