北海道の旅から帰ると、Mz君から手紙が届いていた。
尾小屋鉄道の詳細なロケハン結果と、鉄道ファン向けに蒸気機関車を動かす計画がある、という情報だった。これは、どうしても撮りに行かねばならない。
立山重工製の機関車5号は、あまり格好よくないことは分かっていたが、この時点で現役のナローゲージの蒸機は、日本中にこれ一台しか残っていなかったのである。
この日のことは、「過去への旅」でも詳述する予定だが、私にとっては画期的な体験だった。
安全弁から吹き上げる蒸気が陽光に映え、給水タンクからあふれる水が逆光にきらめく。
カマの調子を見る機関士、久々に火の入った機関車を見るためにやってきた山間の町の人々、
親に連れられて初めて蒸機を見にきた幼い子、そして駅構内を走り回る子どもたち。
それまで漠然と憧れていた情景が、次々と眼前に現れた。
鉄道と人間との距離が、圧倒的に近い。それが一つのフレームに収まるのである。