children in the sunlight


ホームで遊ぶ子

「子どもと鉄道」というモチーフを明確に意識したのは、いつのことだったか覚えていない。しかし、影響を受けた写真のことは、はっきりと記憶に残っている。
 それは中学3年の冬、キネ旬「蒸気機関車」に掲載された「鉄道讃歌」三部作のひとつ、沼尻鉄道の写真であった。林の中から、小さなガソリンカーが客車を牽いて併用軌道にやってくる。ランドセルを背負い、道端で列車を見ている子ども。
 自分が体験したわけではないけれど、懐かしい。いつか、どこかで、自分もこんなふうに列車を見ていたはずだという感覚が生まれてくる。煙を吐き驀進する蒸機の写真が並んでいる中で、この沼尻の写真は、なにかとてつもなく異質な魅力を放っていたのだった。
 雪の積もる町中を行く列車、春先の野辺を去り行く列車の姿。何度も眺めているうちに、軽便鉄道は蒸機が走っていなくても十分に魅力的なのだということを教えられたのも、この作品のおかげである。

次へ