給炭用設備

給炭用設備 その1

 鉄道ファンが「給炭台」と呼ぶものが、鉄道の規模の大小・機関区の性格によらず、我国では一般的である。旧国鉄用語では「平棚式石炭台」という。蒸気機関車は石炭よりも水の補給が頻繁に必要なため、駐泊所などでは給水塔があっても給炭設備を持たない場合があるが、逆に、石炭台のあるところには通常給水設備が設けられている。
 国鉄の機関区にみられた高架の給炭槽は、ホッパーで機関車への積み込みを行い、石炭の補給はクレーンなど各種の装置を用いる。昭和30~40年代に使用されていたものはほとんどが電動式であるが、もとは蒸気動力のクレーンが使われていた。

 なお、英語では石炭をためておくものは、すべてcoal bunker であり、詰所裏の石炭置場も、巨大な貯炭槽/ホッパーも、機関車の炭庫も、同じ単語で表すことができる。詳しく分類すると、線路脇の石炭小屋のようなものは coal bin、我々の言う「給炭台」は coaling platform、「ホッパー」にあたるものが coal tipple で、tipple のうちで特に建物の面積に対して高さがあるものが coal tower と呼ばれているようだ。

 coal tower の典型的なものとしてはD&RGWのデュランゴ、観光鉄道として存続しているCUMBRES&TOLTECのチャマの例を参照。これらは模型化の素材として人気も高いようである。
 日本の鉄道では、おそらく初期の北海道炭鉱鉄道などにはこのタイプがあったと考えられるが、国鉄・私鉄を問わず普及した形跡はない。夕張鉄道鹿ノ谷の給炭塔が珍しい北米のタワー型で、1970年代半ばの廃止まで残されていた。→鹿ノ谷給炭塔の詳細へ

上右は機械と人力を併用している東武鉄道館林。下左は巨大な給炭槽を持つ広島第二機関区、右は国府津機関区の石炭台。

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