中坊と汽車 八高線と川越線

わたしが今も昔も住んでいるのは武蔵野市なので、当時いちばん近い撮影地は八高線だった。
 山手線にD51の貨物もまだ走っていたが、本数も少ないし、日常的な都会の風景のなか、架線の下では面白みに欠ける。 その点、八高線は山あり谷あり鉄橋あり。初心者にはうってつけだ。で、まずは近場の拝島と八王子に出かけることにした。 1968年1月のことだ。
 カメラは小学生のときから使っているコダックのインスタマチックと、親父を拝み倒して借りた初代キャノネット。 コダックにはカートリッジのカラーネガを入れ、キャノネットにはモノクロフィルムを詰める。
 ドキドキしながらの初めての撮影は、結論からいえば、大失敗の連続だった。
 プラットホームからではうまくフレームに車輛がおさまらないし、八王子の機関区でも、蒸機をどう撮ったらいいのか途惑うばかり。 走行写真なんて問題外だ。

おまけにウチの親父は厳しくて、「自分でやってみなさい」と細かく教えてくれないので、 キャノネットのほうはフィルムが空回りしたり露光したりで、散々な結果に終わってしまった。

 その後は総武本線のC57をまず撮りたかったのと、後述の平遠征があったので、八高線は1年ちかくお預けとなり、つぎに訪れたのはその年の11月3日。このときは、拝島と有名撮影地だった金子坂で撮影している。持参したフィルムはたった1本というから、かわいいものだ。

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