渡道して最初の目的地、夕張鉄道で2日を過ごしたあと、札幌から夜行「利尻」で宗谷本線を北へ向かった。幌延着は5時前。
春分を過ぎたといっても、まだ夜が明けるまでしばらく時間がある。雪に覆われたホームには、誰も降り立つ気配がない。
目的地の問寒別は、ここから少し戻らねばならないので、6時過ぎに出る上り各停を待つ。
問寒別まで約30分。途中には時刻表にない乗降場が幾つかあって、駅名の看板も車内からは見えにくい位置に一つだけだったりする。
うつらうつらしながら乗っていたので、駅の数だけを数えていると降りるところを間違えそうで、気をつけなければならなかった記憶がある。
問寒別に着く頃には、もう雪原の彼方に太陽がまぶしく輝いていた。
問寒別市街駅を出て東へ向かう軌道。レールの上にはうっすらと雪が積もっていた
右)幌延駅に停車中の急行「利尻」。半年の間に、C55からDD51牽引に変わっていた。やがて夜明けを迎える薄明の空に、低く下弦の月が輝いている。ここは北緯45度線の直下だ。
国鉄の駅の近くにある軌道の乗り場は、「問寒別市街」という名前で、そこから終点20線までの16km強を一日2往復の列車が走るはずであった。
構内は吹き溜まりで1mほどの雪に埋もれているが、本線が除雪されているので動いているようだ。一安心である。
車両や線路には、わずかに雪が積もっていたが、昨夜か今朝の降雪らしいので、前日に列車が走ったのは間違いない。
ターンテーブルの前に客車が停めてあり、そばには木造のフランジャー(線路内の除雪をする車両)があった。
地元の大工さんが作ったのではないか、と思うような印象。前から見たところは何のための車両か分からない。
後部の観音開きの扉から入るつくりになっている。こういうものに出会えるのがナロー探訪の醍醐味で、実に楽しい。
構内をうろついていると、やがておじさんが現れて、コンクリートの機関庫のシャッターを開け、フランジャーに差してあったホウキで
ターンテーブルの除雪を始めた。ここの雪をどけないとDLを出せないのである。
車庫内には泰和車両製の機関車が幾つかあったが、この日動いたのは加藤のDL。 ターンテーブルを少し回転させて本線に出し、バックして停めてあった客車に連結。 乗り込むと天井に頭がぶつかりそうな小ぶりな客車で、その後ろにはもっと背の高い有蓋車が一台つながれていた。