柿の島に停まっている「ボンゴ君」。背後に見える建物は保線合宿所。この建物は森林鉄道の廃止時に競売にかけられ、ある保線担当者の方が購入して自宅として使えるように改造し、今も遠山谷に存在している
運材台車の先に、マツダのライトバンを改造したレイルカーが停まっている。この「ボンゴ君」、スタイルは良いとはいえないが、
元の車体がクルマであるだけに、それなりにまとまりのある形ではある。前からだとちょっとカワイイ感じにも見えるけれども、
横や後ろからだと、どうも下ぶくれのところが気になる。
このクルマのことは、「鉄道ファン」の記事には載っていなかった。後に汽車くらぶや煙管プロの人たちに聞いたところでは、最初に行ったときには無かったらしい。
これが梨元の橋を渡っている姿を見たときには驚喜したそうだが、たしかに日本中探しても、こんな変な車両は当時他になかっただろう。
熊谷組が持ってきたのは72年のようだが、前歴があるのか、下回りは何を転用したのか、遠山が廃止された後はどうなったのか…「謎だらけ」である。
(左)柿の島の停車場は川沿いの斜面を削った僅かな平地にあった。右が本線で左が信和の側線。この先、線路は営林署の側線の端で途切れている
(右)信和の盤台に停めてある運材台車。左写真の反対(上流側)から見たところ。右手の対岸から、やぐらの上に架線が渡してあり、ここで材を台車に積む
初めて見る集材機や架線、盤台(という名であることはかなり後になって知った)、線路をまたいでいる木のやぐら、小さな転車台など、いろいろ発見があった。
対岸の斜面におりてきている集材用ケーブルがあり、2つある盤台の手前のほうから、運ばれてきた丸太を斜面に落とす構造になっているようだ。
そこから川のこちら側に運ぶ短いワイヤが張られていて、線路際の小さい集材機はそれを操作するためのものらしい。
森林鉄道の現場を見るのは初めてなので、ワイヤの繋がりや盤台の構造を調べてみたい気もするが、空の台車が上がってくる前に良い撮影地を見つけておかねばならない。
一帯の図をノートに描き、おもしろいものだけを撮って戻ることにした。(柿の島構内図は「遠山森林鉄道と山で働いた人々」62p参照)
(上)対岸にある盤台 (下左)事故防止のためワイヤの下に設置するやぐら (下中)線路脇の集材機 (下右)モーターカーの向きを変えるための転車台