雪国抄

それはともかく、注意深く読むとこの冒頭で当時の土樽の様子が簡潔かつ的確に点描されていて、鉄道好きには興味深いものがある。たとえば、

「鉄道の官舎らしいバラックが山裾に寒々と散らばつてゐる」
「ラツセルを三台備へて雪を待つ國境の山であつた。トンネルの南北から、電力による雪崩報知線が通じた。除雪人夫延人員五千名に加へて消防組青年団の延人員二千名出動の手配がもう整つてゐた。」

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 などなど。

 そして三等車のなかでの物語の予兆がさまざまに描かれるなか、主人公・島村は雪の越後湯沢駅に着くのである。