くじば そしてツバメたち 9


 構内にはツバメが飛び交い、鉄道が廃止されたことなどわたしたちには関係ない、とばかりに、駅舎の待合室の天井に今年も巣を営んでいる。

 そんな光景の数々に、「このままの形で、鉄道記念館にでもすればいいんだがなあ」と、私は思うばかりだった。そしてじっさい、車庫と車輛の多くはしばらくの間、むかしと同じ雰囲気のまま残されていたのだが、まことに残念なことに1980年冬、不心得者の放火によってほとんど焼失してしまった。いまは跡地に、老人施設が建てられているという。井笠鉄道の記念館は新山駅を利用したささやかなものが出来たが、是非ともくじ場に作りたかったものである。

 それにしても、あのツバメたちの子孫はどこへ行ったのだろう。どこかにくじ場駅舎のような、安全な営巣の場所を見つけたことを、祈るばかりだ。

わずかに線路の残された車庫と構内に全車両が並ぶ(上)。 1号機関車と客車8両は、後に西武山口線で営業運転に使用され、客車群のうち4両は北海道「丸瀬布いこいの森」に渡っている


車両課の入り口にある鐘も、もう鳴らされることはない(下)    

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