真田・傍陽線は、別所線よりも変化に富んだ沿線風景があったにもかかわらず、この時の私はそれをどう切り取ってフィルムに収めるかということが、よく分かっていなかった。翌年に上田駅でちょっと撮ったきり、その後廃線まで再訪しなかったのは、今考えると実にもったいないことをした。
もし、タイムマシンに乗って昔の上田に行くことができたら、丸子線でも西丸子線でも戦前の青木線でもなく、もう一度、真田・傍陽線に行ってみたい。時期は晩夏か、秋の刈入れどき、あるいは山に雪が残る芽吹きの季節も良さそうだ。急勾配を登る姿、急カーブを曲がっていく様子、街中の小さな駅の風情。そして、人々の日常に溶けこんでいる旧い電車。たった一日でも、始発から終電までしっかり追いかければ、おもしろいものが撮れると思う。<おわり>