明治の残照 7


横川~軽井沢の廃止前には、たくさんの鉄道ファンが最後のEF63の奮闘を記録しようと碓氷詣でをしたそうである。矢ヶ崎のことに気づいた人はどのくらい居たのだろう。誰か、まとまった記録を残した人は居るのだろうか。それとも、すでに撤去されていて知る術すらなかったのだろうか。

 当時、私は鉄道趣味とは離れて久しく、あの建物のことなどまったく忘れていた。実は、最近思い立ってネガを調べてみるまで、自分があの建物を撮ったことは覚えていたものの、変電所だけでも70カットも撮っていたとは思っていなかった。もともと、これらの写真は、いつか現役時代の資料や写真を探し出して、それと合わせて作品にしたいという構想を抱いていたので、この時代のものだけをまとめるのは最初の意図とはかけ離れているのだが、検索をかけてみて丸山変電所は膨大なデータがWEB上に存在するのに対し、矢ヶ崎は皆無に等しいという状態に何か納得できないものを感じたので、単独で公開することにした。
 もう永遠に失われてしまった、明治の建物との対話の時間を感じとっていただけば幸いである。


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