扇形庫 その1

国鉄の扇形車庫 roundhouse

 蒸気機関車を多数配置している機関区には、転車台と一緒に扇形車庫を設けていた例が多い。矩形庫に比べて、少ない面積で多くの台数を収容できるからである。
 旧国鉄では転車台から出る線路と線路の間の角度は9度と定められていた。
 明治期の車庫はほとんどがレンガ積みだったと思われるが、大機関区ではある時期に強度の関係で壁や柱をコンクリートや鋼材にしたようで、昭和30~40年代になると手宮以外にはレンガだけで造られた躯体を持つ扇形庫は残っていなかった。木曽福島の庫は、壁の一部がレンガ積みのまま70年代まで残っていた珍しい例のようである。
 そのせいか、国鉄の大きな扇形庫はよく言えば近代的、悪く言うとやや殺風景なものが多く、丸屋根付きの英国や米国の古いタイプのような風格のあるものは見当たらない。ちなみに、“roundhouse”で画像検索すれば英米の実例を多数見ることができる。
 残されている画像を見ると、国府津、新津、早岐などは、なかなか秀逸なデザインだが、他の大型の庫には魅力的なものが少なく、どちらかというと小規模のものの方に好ましい例が多いようだ。

写真上=小樽築港機関区 1960年代末 ここは庫内線が30もあり、庫全体が円のほぼ4分3のという(270度以上の)巨大な建物だったが、残念ながらデザイン的には凡庸である。降雪地では扉を持つことが多い。
下=尾久機関区 1960年ごろ
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